GMのEVバッテリーの生産拠点、韓国LG子会社 との合弁会社 アルティウム・セルズの設立を発表
発表
米ゼネラル・モーターズ(GM)は2021年4月16日、米南部テネシー州に米国で2カ所目のバッテリー生産工場を建設すると発表した。電気自動車(EV)に搭載するバッテリーを生産する。
なお、同社はオハイオ州に同じく約23億ドル(約2500億円)を投資し、アルティウムバッテリーの工場建設を進めていて、今回の新工場は米国で2カ所目のEVバッテリー生産工場となる。
新工場はLG化学の車載電池部門を引き継いだLGエナジーソリューションと折半出資でGMが設立する。23億ドルの投資額は両社が米オハイオ州で建設中の電池工場とほぼ同じ規模。1300人を雇用し、LGとGMが共同開発したEV用リチウムイオン電池「アルティウム」を生産する。
GMは2020年10月に電動スポーツ用多目的車(SUV)「キャデラック・リリック」の生産を発表しており、新工場で生産されるEVバッテリーはこのGMの工場に供給されることになる。
生産目標、30GWh
キャデラック・リリックの最高出力は340PSで、バッテリーパックの容量が100kWhで、300マイル(約483km)以上の一充電走行可能距離を実現している。
生産目標は、30GWhで、キャデラック・リリックで約30万台分に相当する見通し。高級車ブランド「キャデラック」のEVを生産するテネシー州の完成車工場に電池を供給する。
GMの発表、「完全電動化」モデルの投入で2035年までに排気ガスゼロへ
2021年1月28日にGMが発表したのは、2035年までに販売するライトビークル(乗用車、小型トラック)が排出する排気ガス量をゼロとし、2040年までに世界で自社製品と事業活動から排出される二酸化炭素を実質ゼロとする、カーボンニュートラルを目指すというもの。
GMは、ミシガン州のEV専用工場やテネシー州の工場の刷新を含め、今後5年間でEVと自動走行車に270億ドルの投資を行うことを発表している。
自社製品や事業活動でのカーボンニュートラルの達成時期に関しては、フォードやフォルクスワーゲン(VW)などが2050年を目指すことを明らかにしているが、GMが今回発表した目標はそれら企業よりも早期達成を目指すものとなった。
韓国LGエナジーソリューションとは
韓国LG化学(LG Chem)は、2020年12月1日、同社の電池事業が「LGエナジーソリューション(LG Energy Solution)」として正式に独立したと表明した。
初代社長にはLG化学電池事業本部(Energy Solution Company)のキム・ジョンヒョン(Kim Jong Hyun)氏が就任した。従業員は韓国約7000人、その他で1万5000人の合計2万2000人。米国では、米ミシガン州にに研究・開発(R&D)センターがある。
LG化学は、2020年の売上高見通しを13兆ウォン(約1.3兆円)となり、世界最高のエネルギーソリューション企業になる計画だとしている。
韓国LGエナジーソリューションの技術
バッテリーパック内に大容量のパウチ型セルを垂直、または水平に積み重ねられる点が特徴。これによって、車両デザインに合わせて最適な配置が可能となり、蓄電容量を最大化できる。最大充電時には450マイル(約720キロ)以上の走行が可能となる。

特許解析
米国特許を出願する発明者の人数をグラフ化した。出願件数ではなく、開発者の人数に相関が高い発明者の人数のグラフである。

開発強化スタートが2010年あたりから
韓国LG化学(LG Chem)は、2004年から出願があり、発明者が増やし始めた時期は、2010年あたりから。
一方、ゼネラルモータース(GM)は、同じく2010年くらいから特許出願、つまり、技術開発を行いはじめた模様。ガソリンの排気ガス規制がより厳しくなってきた時期と思われる。
最近の体制、発明者400人を超える
近年(2018年)あたりで見ると、ゼネラルモータース(GM)が50人弱で、LGケミカルが350人超と多くの発明者人数を投入している状況であることが分かる。
GMに対する韓国LG化学(LG Chem)の発明者数が多く、LG技術に期待しているGMの状況が伺える。
今後もさらに増やしているのではないかと思われる。
まとめ
GMは、EV車モデルを投入するために、韓国LG化学(LG Chem)と組んで、リチウムイオン電池の工場をつくり、排気ガスゼロに向けて着実に進んでいる。
GMのEV戦略は、遅れていたEV開発を韓国LG化学(LG Chem)と組むことで、競合より先に排気ガスゼロを達成する戦略なのだと思われる。
米フォード(Ford)は、韓国SKイノベーションと組んで、排気ガスゼロに向けて進めているなど、自動車メーカーの多くが、バッテリーEV車の開発や量産化に取り組んでいることが明らかである。
2021年6月7日 アナリスト 松井
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