GMが開発するLiDAR技術、手に入れたFMCW方式であることが判明

はじめに

General Motors(GM)が独自のLiDAR開発をしていることは、2017年のStrobe社の買収発表時に報道された。当時の発表では、方式など技術内容を明かされてはいなかった。

今回、GMの買収先のStrobe社について、特許解析をしてみたところ、FMCW方式の技術を保有していたことが明らかになった。さらに、買収後のGM子会社の特許出願情報について特許解析を行なってみたところ、GMのLiDARの技術開発がFMCW方式について、Strobe社メンバーが継続して開発を続けていることが明らかになった。

一方、FMCW方式といえば、デンソーが共同開発をスタートさせるとして先日(2021年1月)発表した技術方式である。従来のTOF方式ではなく、障害物までの距離に加えて、速度や方向を継続できるFMCW方式で、開発をすることをデンソーは発表している。

LiDARの開発競争は、精度向上が期待できるFMCW方式が主流になっていく可能性が出てきた。この2社の技術開発の進捗や特許権の取得競争がスタートしたことが予測される。

FMCW方式、デンソーとの開発競争

デンソーの提携先のAeva社の固有技術がFMCW方式である。

FMCW方式とは、TOF方式と比べ、物体との距離や方向を検知するだけでなく、物体の移動速度を同時に計測することが可能にする技術と言われていて、実用化されれば、従来のTOF方式より正確な状況を把握しやすくなる技術となる。自動運転車の安全性が増していくことが期待される技術といえる。

GMグループのFMCW方式の開発状況(特許解析)

GMは、2017年にStrobe社を買収している。その技術がFMCW方式のLiDARであることが分かった。

買収前のStrobe社の特許出願を含め、GMグループの特許出願全体を調べてみたところ、FMCW方式のLiDARについての特許出願が多く存在している。パテントマップにしてみた。

FMCW方式の発明者数の時系列推移グラフ

グラフは、縦軸が発明者数(≒技術開発者数)、横軸が出願年(≒開発時期)とした。

Strobe社当時の発明者が2名で、その発明者がGM Cruiseに加入し、特許出願を継続していている。
それに「GM GLOBAL TECH OPERATIONS LLC」(GM本体)の発明者数が20人程度加わっていることが分かる。2017年買収後にGM本体でもFMCWのLiDAR開発が行われていたことが分かった。

GMのキー技術、周波数変調の光を出すレーザー光源

特徴的なレーザー光源「a laser source that is optically coupled to a whispering gallery mode optical resonator.」(出所;Strobe社特許出願)の技術があることが分かった。

詳細は、特許出願を参照してください。

まとめ

GMは、独自のLiDAR開発をしていて、技術のベースが買収したStrobe社の技術で、デンソーが目を付けたFMCW方式の技術であることが明らかになった。

FMCW方式での開発競争や特許権獲得競争が行われることになり、FMCW方式への新規参入企業が増えるなど、今後の動向が注目される。

LiDARの実用化の課題は、コストと小型化とされてきましたが、FMCWが実用化されると、障害物までの距離を測るだけでなくなり、障害物の速度や移動方向を測定できることになり、例えば、前を走行する車が、加速したり、曲がるなどした変化を測定できるのではと思う。完全自動運転、つまり、自律走行の性能UPに寄与する技術になることが期待される。

2021年5月21日 アナリスト 松井

関連記事