EV車用バッテリーの量産に向けて、勢いが凄い中国CATLを選んだトヨタの戦略

当時の発表

2019年07月17日にトヨタが発表した内容は、次の通り。

寧徳時代新能源科技(以下、CATL)とトヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)は、新エネルギー車(NEV)用電池の安定供給と発展進化に向けての包括的パートナーシップを締結し、電池の供給のみならず、新技術の開発、品質の向上、さらにはリユースやリサイクルなど幅広い分野における検討を開始しました。

CATLとトヨタは、電動車を普及させるためには、電池の安定的な供給はもとより発展進化が必要であると考えており、両社で体制を整え具体的な取り組みを進めていきます。

今回の協業により両社は、CATLの電池開発・供給力とトヨタの電動車および電池開発技術を持ち寄り、魅力ある電動車の開発とさらなる普及に取り組んでいきます。

CATL

電気自動車のリチウムイオン電池の製造を行っているCATLは、福建省の寧徳市に本社を置き中国国内に製造拠点がある。主要研究開発センターは寧徳市とドイツのベルリンにあり、日本国内にも開発拠点を開設している。

CATLの年間販売量は、2020年までに50GWhのリチウムイオンの生産能力を目標としていた。

世界一の電池出荷量(Wh)

世界車載電池メーカー上位12社の出荷量(2018年)」(出所;JETRO)によれば、電気自動車用の電池メーカーでは、パナソニックがNo1であったが、2018年には、CATLが抜いて世界一となったとされている。

順位企業出荷量(MWh)
1寧徳時代新能源科技(CATL)23,540
2パナソニック23,300
3恵州比亜迪電池(BYD)11,600
4LG化学7,500
出所:JETROの「世界車載電池メーカー上位12社の出荷量(2018年)

battery特許解析

米国特許を出願する発明者の人数をグラフ化した。出願件数ではなく、開発者の人数に相関が高い発明者の人数のグラフである。

CATL、遅いスタートと一気に増員で

CATLは、2011年に設立した会社。2015年から米国での特許出願をはじめて、2018年には、392人に発明者数を増やした。

発明者が4年で392人まで増やす勢いが凄い。

電池出荷量も2018年に世界一になっていて、それと同期して、研究開発をする特許出願を行う発明者の人数を増やしていることが明らかになった。

CATL対トヨタ、交渉力はどっち?

自動車メーカーのトヨタとバッテリーサプライヤーのCATLとの取引価格は、交渉力で決まる。5forcesとして知られるマイケル・ポーター氏によるフレームワークを使って考えてみた。

例えば、買い手であるトヨタの交渉力は、別なバッテリーメーカーであるパナソニックと提携しているので、CATLと決裂しても対策ができる。一方、CATLは、ベンツ、ホンダ、など多くの自動車メーカーと提携をしているので、トヨタと決裂してもやはり、対策ができる。

トヨタは、EV車だけでなく、FCEVや水素エンジン車の開発を進め、EV車だけに絞る戦略ではないので、各技術の開発状況を見計らいながらの微妙なかじ取りをしているものと思われる。

いずれにしても、両者とも、EV車を多く売り、多くのバッテリーを供給する関係でありたいことは、間違えがなく、対等といえる関係ではないかと思われる。

まとめ

トヨタは、バッテリー出荷量の世界一になった中国CATLと組んで、リチウムイオン電池の量産準備を行い、EV車モデルの市場投入を増やす方向。排気ガスゼロに向けて進めている。CATLは、最近できた会社であるが、量産で世界一になっただけでなく、研究開発をする発明者を急増させる勢いのあるバッテリーメーカーであることが分かった。

トヨタは、EV車モデルの市場投入を増やす方向で計画し、排気ガスゼロに向けて進めている状況が伺うことができた。テスラなどと比べて、遅れているといわれていたが、EV車モデルの市場投入を増やし、量産に向けて取り組んでいる。

バッテリーは、EV車の性能に影響する重要なキーパーツで、充電時間や一充電での航行距離、急速充電の可否など、車両の性能に影響する。それゆえに、自動車メーカー大手各社は、バッテリーメーカーとの提携合戦を行っていて、例えば、米国フォード(Ford)が韓国SK子会社と、米国GMが韓国LG子会社と組んで、バッテリー工場をつくっている。

排気ガスゼロに向けて大手自動車メーカーが揃って、バッテリーの量産準備に取り組んでいる。

2021年6月8日 アナリスト 松井

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