自動運転参入のリスク・チャンス、PEST分析で測る

政治(P)、経済(E)、社会(S)・技術(T)が本業界に与える影響と、逆に、本業界が与えるPESTに与える影響の両方について、分析したので、その結果を説明する。

政治(P) が影響する理由

政治(P)がこの業界に与える影響は大きく、逆に、業界が政治に与える影響は大きい、といえる。

なぜならば、本業界の発展は、民間企業だけではできない側面があって、国に求められることが多く、かつ、国益の面も含め政府としては投資を増やしていくことが重要になるといえる。

例えば、

  • 法整備は、政治そのもの。それをしないと無人での自律走行は認められない。
  • 道路に設置する信号機やビーコンといった交通システムのインフラは、民間企業が決められない。国の税金で行う。
  • 5Gなどの通信も、インフラで使われる方式に準拠せざるをえない。カーナビに組み込まれることになる。
  • 日本政府のモチベーションは、国益を支える自動車産業が海外に取られてしまうことを避けたい。技術が変わることにより、仕事が海外流出してしまう懸念があるので、日本の道路などインフラの整備に投資を増やそうとすることは、必然である。
  • 具体的には、国土交通省、経済産業省、総務省、などが省庁の垣根を越えて取り組み、それを内閣官房が主導し、民間企業との意見交換を重ね、道路の整備や信号機、VICS、などの交通システムの整備、通信方式の標準化、などの整備、それに、道路交通法の整備など、政府が主導している情報がある。

このように、政府は、積極的に推進していて、政治が与える影響は大きいといえる。

 

経済(E) が影響する理由

経済(E)がこの業界に与える影響は、国の予算などが関わるので、自動運転の実現時期が変わる恐れがるが、逆に、この業界の進展が与える経済への影響は、大きいといえる。

なぜならば、経済とインフラの整備の計画は関係性が高いから。経済が悪くなると、インフラ整備のスピードが落ちるのは当然のことである。

一方で、自動車産業そのものが経済を支えている現状を踏まえると、自動運転によって、整備が必要になるインフラ(道路、交通システム、等)の整備が必要になり、巨額の投資が投入されていき、経済が回ることが期待できる。

例えば、

  • 海外メーカーに負けたならば、仕事が海外に流出する。
  • インフラの整備への投資は、民間企業にお金が回る。
  • マイカー購入を控えて若者には、シェアードサービス、ライドシェアなどにより、クルマの利用は増える。
  • ガソリンエンジンが減りガソリンスタンドが減る方向にある一方で、充電スタンドが増えることが推測され、経済全体で見れば、この業界の発展にともなって、経済も良くなる方向に寄与するのではないかと思う。

このように、自動運転の業界の進展が与える経済への影響は、大きいといえる。

 

社会(S) 所有から利用の時代へ

生活者のライフスタイルや意識の変化といった社会(S)への影響は、大きいといえる。

なぜならば、モビリティは、生活に欠かせないことだから。その便利さや安全性が与える影響は大きい。

例えば、

  • 無人の自律走行車が交通事故をおこせば、問題視する報道が増える
  • 老人による事故が多発する問題などは、軽減される方向が期待されている。
  • マイカーを待たない若者は、配車サービスやライドシェアなどを利用し、所有から借りるに変わっていく可能性がある。
  • タクシーは、無人化など人件費削減につながり、運賃が安くなったり、或いは、スマホで呼べば来るクルマなど利便性が増す期待がある。
  • 宅配便の人件費不足は、無人化などで軽減し、宅配業者の業務効率が改善する。
  • コンビニエンスの宅配サービスなども、無人化されれば、店に買いに行かない時代がくるのかもしれない。
  • 技術開発者は、エンジンからモーターにシフトすることで、メカから電気・IT人材の需要が高まる可能性がある。
  • スタンドは、ガソリンから充電に変わる。
  • カーナビ予約は、レストラン予約まで行くなど、それほど、先のことではないと思う。

このように、暮らしにあたえる影響は多大だといえる。ただし、影響を感じる前に、安全性の壁を超える必要があり、もう少し時間がかかるのかもしれない。

 

技術(T) が鍵を握る

技術(T)がこの業界に与える影響は、大きい。

なぜならば、技術が未完成だから。完全自動運転の完成には、現時点至ってなく、普及という時期までは10年以上かかるといえる。

例えば、

  • 安全性が確保できていない、AI技術の無人運転には、不安がある
  • 高価、LiDARセンサーだけとっても、普及価格には程遠い。
  • インフラ整備、巨額の国の予算が必要で、時間がかかる。
  • 通信の標準化、なども、コストや利便性の面で時間がかかる。
  • 電気自動車の急速充電技術や、スタンドの整備などにも時間がかかる。
  • AI技術の利用は、画像認識で完成に近いが、運転制御への利用には時間がかかる。

このように、技術課題が多くあり、逆に、この技術実現が業界に与える影響は大きいといえる。

  1.  

最後に

ポイントは、完全自動運転の実現。それまでは、技術開発にフォーカスしたウォッチングが重要になる。

2019年11月22日更新 アナリスト 松井

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