□定義
自動車が衝突しそうな時に、車を停止させようとする機能のことです。技術的には、衝突する対象物をセンサーで検知し、速度や距離を考慮して、衝突の恐れがあると判断した際に、自動的にブレーキが作動させる。
呼び名は、Autonomous Emergency Brakingと欧州で呼ばれ、日本では、「衝突被害軽減ブレーキ」、などと呼ぶように 自動車公正取引協議会 が指導をしています。( 「自動ブレーキ」と呼ばないように指導している )。
呼称は、 各社で異なりますが、自動車メーカーのほとんどが「 衝突軽減ブレーキ 」の機能を商用化しています。
□安全性
「衝突被害軽減ブレーキ」 機能が搭載されてないより、ある方が安全と言える機能だといえますが、万能ではないことを 国道交通省が動画で説明しているように、スピードを出し過ぎていたりなどの条件下では安全とはいえないとしている。
□ センシング技術の方式
センサーには、「赤外線レーザー」、「単眼カメラ」、「ステレオカメラ」、「ミリ波レーダー」「超音波」などの複数の種類があって、1種類だけのものもあれば、複数を併用しているものもあります。
□企業別状況
各社の呼称と各社のHP等で説明している内容を以下にまとめました。
トヨタの「プリクラッシュセーフティ 」
センサに「単眼カメラ」+「ミリ波センサー」 を併用しています。
広い視野で人や走行車両をカメラで認識し、一方、カメラが苦手な雨や霧、夜間をカバーすべく、ミリ波レーダーで認識しています。
日産の「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」
前方のクルマや人を検知して、ぶつかる可能性が高まると表示とブザーでドライバーに回避操作をメーター内の警告表示とブザーでドライバーの回避操作を促し、 万一、安全に減速できなかった場合には、ブレーキが作動するとあります。
ホンダの 「 衝突軽減ブレーキ〈CMBS〉(レーダータイプ) 」
ミリ波レーダーで前走車・対向車を認識。衝突の危険が高まると音や表示、軽い自動ブレーキで注意を促し、さらに接近すると強い自動ブレーキをかけ、衝突回避・被害軽減を図ります。対向車の場合には、ステアリング振動によっても警告するとともに、ステアリングによる回避操作もアシストします。
CMBS=Collision Mitigation Brake System
センサに「ミリ波レーダー」を使っています。
衝突の危険が高まると音や表示、軽いブレーキ で注意を促します。
衝突対象が対向車の場合には、ステアリング振動によっても警告する機能もあります。
スバルの「プリクラッシュブレーキ 」
センサに「ステレオカメラ 」 を使っているようです。
ステレオカメラは、視野角と視認距離を拡大して認識性能を向上させているようで、さらに、カラー画像化をしています。それにより、ブレーキランプの赤く光る点灯を認識できるようにし、従来より性能を高めている。カメラの不得意な逆光にも対応する改善がなされ、安定性を高めています。
その他自動車メーカー
他のマツダ、アウディ、など、ほとんどの自動車メーカーが 衝突軽減ブレーキ の機能を商用化しています。
ただし、ここまで紹介したように、トヨタ、日産、ホンダ、スバルの4社を比較してもわかるように、センサが各社異なります。また、日々進化をさせているようです。各社の性能はマチマチといえますし、日々性能が変化していっている状況が分かりました。
□各社技術の違いを特許情報でみる
特許出願の概況
では、各社の特許出願の状況を見てみましょう。
特許出願数を出願年で時系列にしたパテントマップを示しました。

最近の特許出願のボリュームは、トヨタが各社の倍くらいあることが分かりました。
スバルは、2008年に 初代のEyeSightを出して、その前の開発時期に特許出願を多く出願しました。
その近辺は、日産自動車の特許出願も比較して多くありました。
しかし、最近、トヨタの特許出願が特に多くなっていて、日産自動車の出願が 衝突軽減ブレーキ に関し、減らしてきていることが分かります。ホンダは、2014年に増やしてきていて、その後も継続をしていますが、トヨタに追い付いていない状況です。
商用化した機能の各社の センサは、 異なるようなので、技術開発の違いを特許出願で把握して見ることにしたので紹介する。
トヨタ
「単眼カメラ」+「ミリ波センサー」 を併用 する技術に関する特許出願のパテントマップ によれば、開発活動が活発になってきている状況を推測する。
- 補足1)本グラフの見方;横軸;開発時期、縦軸;技術開発アクティビティ(出願数)
- 補足2)2018年、2019年の出願数は、未公開分の出願が多くあるので、グラフに含めませんでした。
- ※ 条件
- 1)調査日;2019/10/07
- 2)対象国;日本特許の出願が対象。
- 3)開発年=出願年とした。ただし、優先権出願は優先日でカウントした。
- 4)検索方法;公報全文のキーワード”カメラ”と”ミリ波”の両方を含む公報
- 5)出願日の限定;2010/01/01~
ホンダ
「ミリ波センサー」 を使った技術に関する特許出願のパテントマップ によれば、開発活動が活発になってきている状況を推測する。
- 補足1)本グラフの見方;横軸;開発時期、縦軸;技術開発アクティビティ(出願数)
- 補足2)2018年の出願数は、未公開分の出願を推定し、グレーで表示した。
- 補足3)2019年の出願数は、未公開分の出願があるので、グラフに含めまていない。
- ※ 条件
- 1)調査日;2019/10/07
- 2)対象国;日本特許の出願が対象。
- 3)開発年=出願年とした。ただし、優先権出願は優先日でカウントした。
- 4)検索方法;公報全文のキーワード”ミリ波”を含む公報
- 5)出願日の限定;2010/01/01~
2019年12月19日更新 アナリスト 松井